福岡歯科医院

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愛媛県 松山市 三津にある歯科です。皆様の笑顔と健康のお手伝いをいたします。

コラム

当院が発行している医院新聞に掲載しているコラムを一部紹介いたします。2か月に一度発行しておりますので、来院された際には是非ご覧ください。



コラム1 人類の食の文化、お菓子の歴史

 むし歯の大敵として、いつもやり玉に挙がるお菓子ですが、果実を主食とする猿から進化したとされる人類は、そもそも甘党だったといわれています。 洋菓子の起源は古く、先史時代には果実や落花生などを干したり、アルコールやハチミツに漬けたりして加工したものを食べていたそうです。
 そして小麦を使ったお菓子(ケーキの原形)が最初に作られたのは、パンの発祥の地であるメソポタミアとされています。古代メソポタミアの人々は、ビールやワインと共に、ケーキをほおばっていたのでしょう。
 また、パンの先進国である古代エジプトでは、バターやクリームが新たに採り入れられ、ハチミツとミルクを混ぜて焼きあげるハニーケーキが貴族の間で人気を博しました。 製粉や製菓の技術は古代ギリシャ、ローマでさらに発展しました。特に、十字軍の遠征は、ヨーロッパに砂糖という甘味料を初めて伝えました。 当方からもたらされた砂糖やリキュールをふんだんに用いたお菓子は、最高級のぜいたく品とされ、珍重されました。
 大航海時代が訪れると、新大陸を含む世界中からさまざまな食材がヨーロッパに流れ込み、新たにたくさんの種類のお菓子が生み出されました。 その後各国には独自の伝統的な菓子文化が芽生えましたが、洋菓子は国境や文化の違いを超えて世界中に愛されています。
 日本へは1543年以降、ポルトガル人やスペイン人によって鉄砲などと共にカステラ、ボーロ、コンペイトウ、カルメラなどの南蛮渡来のお菓子が伝わりました。 ちなみに、14代将軍の徳川家茂は、自ら調理するほどのカステラ好きだったことが知られています。
 17世紀前半以降、江戸幕府の鎖国政策によって輸入が制限されると、試行錯誤の結果わが国独特の和菓子が生み出されることになるわけです。たかが菓子と侮るべからず、お菓子は人類の文化そのものです。 食する時には、歴史の重みを感じ、適量をありがたくいただきましょう。食べた後の歯のブラッシングも忘れないように気を付けて下さいね。 


コラム2 味とテクスチャー

 カナダの脳外科医ペンフィールドの「ホムンクルス」(小人)という図があります。脳の中にある体をつかさどる部分の比率を人体で描いたものです。唇や歯、舌の占める割合が非常に大きいことが一目でわかります。
 さて、唇と頬は、爬虫類にはなかったものが哺乳類で現れてくるひと繋がりの構造です。魚や蛇、蛙の顔には表情がありません。それは、哺乳類以外の動物では顔に唇や頬のような肉質の部分がほとんどないからです。唇と頬ができて初めて、口の中で食物を噛むことができます。つまり『咀嚼』です。
 食物は私たちにとって不可欠である一方、体にとっては異物であり危ないものもあります。食べる時には、感覚をフル活用して危険性を少しでも減らします。視て、嗅いで、口に入れ、口は体に入れるかどうかの最後の判断をします。その基準は、味とテクスチャー(歯ごたえ、歯ざわり、舌触りなどの刺激)といわれる感覚です。
 味は水中の分子に反応しますので、味を感じるには咀嚼して唾液と混ぜ合わせることが必要です。これにより美味しい、不味い、危ないなどを判断します。大まかに言うと、甘味はエネルギー、塩味はミネラル、甘みはタンパク質、酸味は腐っているのかな?苦味は毒物かな?というシグナルです。噛むことは飲み込みやすくするだけでなく、味覚がフルに働くための役割も果たしています。
 もう1つテクスチャーを。口の中で、ジャリジャリしたものや尖ったものをを危ないと感じたり、ご飯の硬さや粘り、リンゴのシャリシャリ感、こんにゃくの弾力を歯ごたえとして楽しんだりします。前歯のすぐ後ろの上あごにヒダヒダがあります。ここに食べ物を舌でわずかに圧縮して微妙な硬さの違いを見分け、絹ごし豆腐なら奥歯で少し噛んで、リンゴならカットして奥歯でしっかり噛んで、という風に。
 食べ物のおいしさを感じる時、歯は欠かせない働きをしています。


コラム3 貝原益軒『養生訓』に学ぶ ヘルス・プロモーション(健康づくり)

 貝原益軒(かいばらえきけん)は江戸時代に生きた儒学者です。そして、自ら考案した健康法『養生訓』を実践し、85歳の長寿を全うしたとされています。
現在の日本は世界一の長寿国とまで言われるようになりましたが、糖尿病・高血圧などの生活習慣病が逆に増え、これらの疾病により、寝たきり老人が増えるという素直にも喜べない結果にもなっています。そこで、老後も健康な生活を楽しむために、積極的に自らのヘルス・プロモーションを考える時代なのです。
 さて、貝原益軒が養生訓を著したのは84歳の時とされていますが、「1本の歯もなくしていない」と記述されています。 80歳で20本自分の歯を残すという『8020(ハチマルニイマル)』をこの時代に余裕で達成していたことになります。 果たしてこの養生訓には、何が書かれてあったのでしょうか。歯についての記述はふたつほど。ひとつは、「1日に歯を35回、カチカチ鳴らすと歯の病気にならない」、もうひとつは「楊枝で歯の根を深く刺してはいけない、歯の根が浮いて動きやすくなる」ということです。解説を試みるとこうなります。カチカチ音がするほど噛むことは、歯や歯ぐきを鍛えることになり、むし歯や歯周病の予防に繋がります。そして、現在の歯ブラシに相当する楊枝で歯ぐきを傷つけることは、感染を引き起こし歯周病を悪化させるということでしょう。  つまり、何も特別な事を書いているわけではないのです。これに比べると現在歯科医院で実践している予防ケアの方が、より一層充実していますね。
 しかし、現代人においてもっとも大切なこと、困った時の医者頼みにせず常に自分の身体の手入れに気を配るという養生の基本を説いているのです。
私たちもこの偉大なる先人、貝原益軒先生の「自分の健康は自分で守る」という根本的な教えに従い、日頃より歯だけでなく全身の健康管理に留意し生活していきたいものですね。


コラム4 八重歯と日本女性のチャームポイント

 最近の女性のチャームポイントをご存じですか?少し前は「二重まぶた」や「ほくろ」「えくぼ」などが有名でしたが、今は「八重歯」が一番のチャームポイントだそうです。驚くことに八重歯に憧れる方の中には、八重歯を人工的に作って装着する「付け八重歯」をオシャレ感覚でされる方もいらっしゃるようです。
 チャームポイントの移り変わりの背景には、若い女性の憧れるアイドルが影響していることがあります。最近では、今をときめくAKB48の板野友美さんやタレントの沢尻エリカさんが挙げられます。このブームは20年ほど前にもあり、1970年から80年代にかけても「八重歯」が流行したようです。女優の石野真子さんや松田聖子さんが有名ですね。
 では、なぜ八重歯が魅力的なのでしょうか。八重歯の女性は年齢よりも幼く見えるのが魅力のひとつです。実は日本人の八重歯好きは、江戸時代くらいまでさかのぼるのではないか、という説があります。これは、高貴な身分の人は小さいころからやわらかいものばかり食べていてアゴが細くなり八重歯になったため、それに対する憧れが生じたのではないかという説です。
 また、作家の谷崎潤一郎氏は随筆のなかで「元来日本では八重歯や味噌っ歯の不揃いなところに自然の愛嬌を認め」「東京、京都、大阪等の大都会の美人と云うものは大体において歯の性が悪く、不揃いである」と書いています。80年前の日本人は八重歯に愛嬌を感じており、都会の美人はみな八重歯だったことがわかります。欧米人の求める美の基準はハリウッドスターの口元に代表されるように完璧性を重視する傾向がありますが、日本人は元来、八重歯のようにちょっと崩れていたり欠けていたりするところに美を感じるようです。
 ちなみに、先ほど挙げた石野真子さんは、年齢にふさわしい口元にしたいという理由で25歳の時に矯正されて、今は八重歯ではないそうです。若い時の八重歯の魅力は、年とともに減っていくものなのかもしれませんね。


コラム5 癌とむし歯は似ている?

 私たち人間の体の中では、常にガン細胞は作られています(1日に約5,000個)。ただ、正常細胞の方が強いため、ガン細胞はやっつけられ、病気になりません(白血球の仲間のNK[ナチュラルキラー]細胞がやっつkてくれる)。しかし、免疫力などが落ちると、ガン細胞の自律性増殖が抑えられなくなり、発病するのだそうです。
 歯のむし歯にも同じようなことがいえます。歯の表面は常に酸にさらされ、歯の表層下にミネラルの分布が低くなる現象が起こります。この現象は主に食事の直後から始まります。これを脱灰(だっかい)といいます。ただこの段階では、表層のミネラルは比較的多く残っていますので、穴はあいていない状態ですし、また細菌の侵入もありません。そして食後、時間の経過と共に、脱灰された歯の表面と唾液が接する機会が確保され、修復して行きます。それが再石灰化と呼ばれる現象です。
 このように歯の表面では常に脱灰と再石灰化という二つの現象が起きているのです。そしてそのバランスが崩れ、脱灰が再石灰化を上回るとむし歯になるのですね。つまり、ガン細胞が脱灰で、NK細胞が再石灰化というわけです。
 ですから、食後や寝る前の歯の表面の汚れを取り除く歯磨きは大事ですし、プラス再石灰化を促すフッ化物の応用はぜひとも必要です。
 しかしだらだら食べ続けていたり、食後や寝る前の歯磨きを怠るとそのバランスが崩れてむし歯になるのです。
 だらだら食べるな、砂糖は控えろ、歯磨きしようねというと、どうしても辛抱とか我慢という暗いイメージがありますが、小さい子どもを教育するには大事なことです。しかも正しい食生活の管理と身だしなみの教育は、むし歯予防にとどまらず、子どもたちの健全な心の発育にも好影響を与えますので、若いおとうさん、おかあさん方頑張ってください。そして、お孫さんを可愛がっていらっしゃるおじいちゃん、おばあちゃんにもお願いします。


コラム6 震災関連死と誤嚥性肺炎を防ぐ‐歯科からのアプローチ‐

 平成23年3月11日に東日本大震災があり甚大な被害がもたらされました。
 多くの犠牲者が出た今回の大震災ですが、家屋倒壊による圧死や津波にのまれるといった地震に直接起因する死だけでなく、避難所の寒さや衛生状態の悪さから持病が悪化するなどして亡くなる震災関連死も増えているようです。
 1995年の阪神大震災では、6400名を超える死者数の1割以上が震災関連死とされています。避難所などで亡くなる震災関連死の原因で誤嚥(ごえん)性肺炎が注目されたのは阪神大震災のときでした。直接死が5512人で、震災関連死922人のうち24%(223人)が肺炎、そのほとんどが誤嚥性肺炎でした。
 誤嚥性肺炎は、加齢や脳血管障害の後遺症で飲み込みやせきをする力が弱くなり、口の中の細菌や食べ物が誤って気管から肺に入って起こります。避難所では水や歯ブラシが不足して口腔ケアが不十分になり誤嚥性肺炎は起こりやすくなります。
 予防方法として歯磨きが最大の予防になります。歯磨きができない場合はうがいをして下さい。使える水が少ない場合はなるべく小分けにして回数を多くしましょう。水が無い場合はガーゼなどを人差し指に巻き付け歯の表面の汚れを落として下さい。
 また、入れ歯は汚れやすい素材です。入れ歯を清潔にすることを心がけて下さい。食べた後は歯ブラシ、もしくはガーゼなどで拭いて下さい。そして夜は外して寝て下さい。
 唾液も誤嚥性肺炎を防いでくれます。細菌を洗い流してくれるだけでなく、殺菌効果もあります。唾液を出す方法としては、あごのエラあたりの少し下側に親指をあて、他の指を耳の前あたりの頬にあてます。ここには唾液のたまっている袋があるので円を描くようにもんでいくと2~3分もすれば次第に唾液が出てきます。
 阪神大震災の教訓が生き、新潟県中越沖地震では肺炎による震災関連死は1人だけでした。東日本大震災の一刻も早い復興を願っています。


コラム7 歯科衛生士さんってどんな人?

 歯科医院を受診すると、担当の歯科医師が治療しますが、それと同時に歯石の除去をしたり歯みがきを指導してくれる女性(今は男性もいます)も担当してくれることがあります。
 治療に入る前の初期治療や予防処置、そして治療後のメンテナンス(病状の安定を維持する定期的な治療)を行うのが歯科衛生士です。
 歯科衛生士は歯科衛生士法に基づき、厚生労働大臣免許を取得した歯科医療従事者のことです。
 そのためには、歯科衛生士養成校卒業後(3年制・4年制)、歯科衛生士国家試験に合格することが必要で、現在全国で約8万7千人が歯科医院、病院、市町村介護老人保健施設などで就職し活躍しています。
 その業務には、歯科予防処置、歯科保健指導及び歯科診療補助の3つがあり、歯科医療と歯科保健の分野で重要な役割を担っています。
 歯科衛生士は歯科技工士や医院受付、歯科アシスタントと並んで、歯科医師にとって歯科医療の現場になくてはならない大切なパートナーです。
 そもそも歯科の2大疾患と呼ばれる「むし歯」と「歯周病」は、再発しやすい病気ですので治療後も予防が不可欠です。
 特に歯周病は生活習慣病とも呼ばれ、患者さんの普段の生活習慣や食習慣をも改善して頂くことが必要となってきます。
 このように患者さんの生涯を通じて口腔歯科保健を確立し、いつまでも快適に食生活を楽しめるよう支援することは、歯科衛生士にとってはとても大きな仕事です。
 そして歯科衛生士は、地域の幼稚園、学校や保健所、病院などでも活躍の場を広げ、そこでは集団指導を行い歯の働きの重要性や全身への影響などを説明します。
 また寝たきりなどのご高齢者のお宅に訪問する歯科診療に歯科医師と共に同行しますし、歯科医師の指導のもと単独で訪問し口腔衛生指導も行います。
 どうですか?歯科医院の歯磨き指導をしている彼女たち(あるいは彼ら)を見る目が、少しは違ってきそうですか?


コラム8 無意識にやってしまう癖、TCHとは…

 実は人間の上下の歯は何もしていない平時は接触せずに離れています。口を閉ざしていても上下の歯は触れていないのです。
 本来上下の歯は会話や食べ物を噛んだり飲み込んだりするときに瞬間的に触れるだけで1日の接触時間は20分程度と言われています。ところが何かに集中しているとき、例えばテレビを見ているときなど上下の歯を触れたままにしている人がいます。たとえ強く噛んでいなくとも上下の歯を軽く接触させただけで口を閉じる筋肉は働いてしまいます。接触時間が長時間になればなるほど筋肉は疲労してきます。また口を閉じる筋肉が働くと顎関節は押さえつけられることになるため長時間になると関節への血の巡りが悪くなります。長時間の正座で足がしびれたときと同じように、感覚が敏感になって痛みを感じなくなってしまうのです。
 このような不必要な上下の歯を接触させる癖を東京医科歯科大学の木野孔司先生がTooth Contacting Habit(TCH)と名付けました。この癖が見られる方に歯が触れ合わないように意識して気を付けてもらうと、他の治療を何もしなくても症状が消えていく傾向が見られました。つまりこのTCHが症状を作り出すうえで大きな役割を担っていると考えられています。TCHにおいて意識をするということは器具を装着したり、歯を削ったりする必要が無いのでまず試してみると良いと思います。
 TCHを行なっている人の多くは自覚が無いため、まずは「上下の歯が接触している」ことを自覚し、TCHをしていることに「気付く」ことが大切です。またメモ用紙に「歯を離しておく」と書いて目に触れるところに貼ることで思い出すことができます。ふと気が付いたときに歯が触れていれば、肩を上下させ首から上の力を思い切り抜いて頬の力を抜き、歯を噛み合わせないようにしてリラックスして下さい。
(参考文献:講談社、完全図解 顎関節症とかみ合わせの悩みが解決する本)


コラム9 歯科インプラントについて

 生前の人間に施されて成功した歯科インプラントで世界最古といわれるのは、1931年中米ホンジュラスで発見された人体骨の下顎骨前歯部に貝殻を使用して3本埋入されたものです。推定紀元前600年とされています。アメリカ・マサチューセッツ州ケンブリッジのハーバード大学考古学・民俗学博物館に所蔵されています。
 そのほか、中国やエジプトでも象牙製の歯が埋入された人骨が、発見されています。その後、宝石や金などいろいろなものが試されましたが、長期にわたり安定し、自分の歯のように噛める歯科インプラントは、つい最近まで出現しませんでした。
 1952年、チタンが骨と結合することが発見され、その後、整形外科の分野にも取り入れられ始めました。
 ただ、歯を失ったからといって、即インプラント治療というものでもありません。失った歯を補充する方法は、従来からある入れ歯やブリッジ(固定式の被せ物)などがあるからです。また、インプラント治療を希望される場合でも、埋入に必要な骨の量が十分であるかどうか、周囲の歯や歯茎の状態、噛み合わせの具合はどうかなど綿密な診査診断の結果、インプラント治療が適さないと判断される場合もあります。また、歯科インプラント治療は健康保険が使えないので、患者さんの負担も少なくありません。そして、インプラントが入れば治療は終わりという訳でもありません。それを長持ちさせるには、常日頃からのセルフケアと歯科医院での定期的なメンテナンスが不可欠なのは言うまでもありません。
 このように、歯科インプラント治療では、メリットやデメリット、術式の方法、インプラント以外の選択肢など、説明を受ける内容が多岐多様にわたります。主治医とは十分よく話し合って、納得の上治療を受けるようにして下さい。
 なんといっても、天然の自分の歯に勝るものはありません。ご自身の歯を大切にしましょう。

 ※「国民生活センターに歯科インプラント治療に関連する相談がこの5年間で2,086件あり、そのうち歯科インプラントにより危害を受けたという相談が343件寄せられていて、増加傾向にある」という報告もあります。


コラム10 アルツハイマー病に画期的な治療法!?

 認知症は、65歳以上の10人に1人は発症すると言われるほど、高齢者に多い病気です。その一つであるアルツハイマー型認知症の日本の患者は推定100万人と言われています。アルツハイマー病の症状は、記憶障害、見当識障害、学習障害、注意障害、空間認知機能や問題解決能力の障害などの徐々に進行する認知障害であり、生活に支障が出てきます。重症度がましていくと食事や着替え、他人との意識疎通などもできなくなり、最終的には寝たきりになります。
 アルツハイマー病の原因として考えられているものの一つにアミロイドβと呼ばれるタンパク質があります。これがアルツハイマー病を患った人の脳内に蓄積されていくと神経が障害されることが分かっています。いまだ根本的な治療法がなく、治療薬の開発も非常に難しく、なかなか前進していません。
 先日、岡山大学の森田学教授らの研究グループでは歯の噛み合わせに異常があると前述のアミロイドβが脳の海馬で増殖することを、ラットによる実験で突き止めました。ラット18匹を、一つ目は奥歯を削って噛み合わせ異常を作る、二つ目はその噛み合わせ異常を4週間後に治療、三つ目は正常のままの3群に分けて実験を行い、8週間後、脳で記憶をつかさどる海馬に発現したアミロイドβの量を特殊な薬品を使って測定しました。その結果、異常群のアミロイドβの量は正常群の約3倍に増加していることを確認しました。一方、治療群は正常群とほぼ同じ量でした。噛み合わせが悪くなると、脳に刺激が伝わりにくくなり、ストレスを強く感じてアミロイドβが増え、噛み合わせが良くなるとストレスが減りアミロイドβは減少すると考えられます。
 このことから奥歯でしっかり噛めない、もしくは奥歯がない状態というのはアルツハイマー病のリスクを高める要素になるかもしれませんが、しっかり治すことで改善も期待されます。


コラム11 超高齢社会における誤嚥性肺炎の防ぎ方

 国の人口に占める65歳以上の高齢者が7%を超えると「高齢化社会」と呼び、14%以上になると「高齢社会」、さらに21%を超えると、「超高齢社会」と表現されます。日本は2012年その割合が23.1%となり、超高齢社会へ突入しました。
 世界有数の長寿国として喜ばしい反面、高齢者を支える福祉や今後の行く末などを考えると深刻な一面もあります。
 高齢者の死因の一位は肺炎です。そして、肺炎で死亡する患者の92%は、65歳以上の高齢者が占めています。その多く(70歳以上では約70%、90歳以上では95%以上)が誤嚥性肺炎です。
 誤嚥性肺炎とは、口の中の汚れや胃液が気管から肺に入ることで発症する肺炎です。鼻から咽頭と喉頭を通って気管に至る呼吸の経路と、口から咽頭を経て食道に至る食物の経路が、同じ咽頭で交差しています。若い時はその区別がしっかりできているので、異物が気管に入るのを防ぐことが出来ます。年を取るにつれ嘔吐反射が衰え、区別があいまいになり、誤嚥をおこしやすくなるのです。
 お口の中は300から400億種類の細菌が棲息し、その数は1000億から1兆個にも及ぶとされています。そんな多くの細菌が肺に送り込まれるわけですから、病気にならない方がおかしなくらいです。
 たとえ寝たきりでなくても、通院の困難な方がご家族や身の周りでおられ、少しでも食事中、喉につかえる、よくむせるといった症状があれば見逃さず、歯科医師による在宅訪問歯科診療と歯科衛生士による口腔ケアを受けて頂きたいものです。お口の中をきれいに保つ口腔ケアは、誤嚥性肺炎を予防、治療する有効な手段として認められています。
 そのほかの歯科医療として、噛み下すことの困難な方には、摂食嚥下を促す嚥下体操や摂食機能訓練など、症例に応じて適用されます。


コラム12 歯に関するウソ・ホント

 「カルシウムを摂るとイライラがなくなる」―。こんな言い伝えを聞いたことはありませんか。体や健康にまつわる俗説の中から、歯に関する“ウソ・ホント”を紹介します。ちなみに、カルシウムはイライラ解消に直接作用しませんので、悪しからず。
Q:歯は噛むほどに強くなる?
 子どもの頃に耳にした人も多いのではないでしょうか。しっかり噛むことは顎の成長や歯並びに良い影響があると言われていますが、大人では良いことばかりではありません。
 例えば、歯周病の人。歯ぐきを鍛えようとガムを噛み続けても、逆に歯の周囲の骨に負担がかかり、歯周病が進行してしまうことがあります。噛む力や回数は、むし歯と無関係ではありません。歯がすり減ったり、歯の表面のエナメル質に見えないヒビが入ったりすれば、知覚過敏やむし歯になりやすい状態を作り出す恐れがあります。
 ただし、よく噛むことで唾液の分泌を促進し、歯の表面を再石灰化するという補修作用があります。「噛むこと=破壊」と「唾液=補修」のバランスを崩さないことが大切です。よく噛んで食べた後は、食間を空けて補修を促すようにしましょう。規則正しい生活が必要です。
 「歯は噛むほどに強くなる」は、大人の場合はウソになりますね。
Q:歯ぎしりは歯の寿命を縮める?
 人に指摘されるまで自分では全く気がつかない歯ぎしり。寝ている間にも歯を擦り合わせて鍛えている―ということは、ありません。それどころか、歯ぎしりは無意識のため力の加減ができず、歯や歯周組織を傷めるリスクが高くなります。
 歯医者さんでは、歯の擦り減り具合で歯ぎしりを“発見”することがよくあります。治療法は、①歯ぎしりしていることを日頃から自覚し、意識的に止める。②睡眠時にマウスピースのような物を入れるスプリント療法―があります。歯ぎしりをする方は、一度、歯医者さんに相談してみてください。
 「歯ぎしりは歯の寿命を縮める」は、ホントですね。



コラム13 歯科治療の未来とiPS細胞の利用

 むし歯によって保存不可能な場合や、歯周病によって支えている歯周組織がなくなると抜歯となります。歯科の二大疾患は進行すると歯を失う病気です。歯を失った場合、噛んだり発音したりといった機能を回復するために「補綴」ち呼ばれる処置が行われています。例えば、「ブリッジ」や「入れ歯」、「インプラント」があります。いずれも機能の回復を代替物で補うもので、失った歯は戻ってきませんでした。
 近年研究がすすめられ、記憶に新しいのがノーベル生理学・医学賞を受賞された山中教授の発表されたiPS細胞の作製です。
 iPS細胞とは人工多能性幹細胞のことでさまざまな細胞への分化が可能な万能細胞の一つで再生医療への応用が期待されています。体細胞に特定の遺伝子を導入することでiPS細胞へと変化させることができます。現在行われている再生医療は他の生体由来の材料を利用していますが、これは患者自身の細胞から作ることができるので、iPS細胞から分化した細胞を患者に移植しても拒絶反応が起きにくいと考えられるからです。このiPS細胞は歯科ではどのように利用されるのでしょうか。患者さんの口の中の粘膜から細胞を取り出しiPS細胞に変化させ歯の卵となる歯胚(しはい)を作り、それを抜歯した歯茎に埋め込み歯が生えてくるのを待つといった治療が近い将来できるかもしれません。
 ただし実現にはまだ問題があります。iPS細胞に変化させる時に癌を誘発する遺伝子を用いることから、細胞の増殖つまり癌化を制御できるかという点です。現在癌化させるウイルスを用いずにタンパク質や化学物質を用いる方法が考えられています。
 現在文部科学省では臨床応用にむけて「iPS細胞研究ロードマップ」を策定していますが、早くても十年以上先になるでしょう。
 ちなみにiPS細胞の「i」だけが小文字なのは、多くの人に親しんでもらえる様に米アップル社の「iPod」にあやかって命名されたそうです。



コラム14 好き嫌いのない食生活がむし歯のない丈夫な心身をつくる

 幼稚園や小学校で子どもたちの口の中の検診をしていると、食生活のありかたと身体の健康状態やむし歯との関係が見えてきます。
 特に3歳頃までが味覚形成の大事な時期です。この時期に好き嫌いなく何でも食べる習慣を身につけることが大切です。
 この習慣を身につけるには、まず離乳食の初期に砂糖の入った甘いものをむやみやたらと与えないことです。
 口当たりが良い甘いものは、麻薬のようなものなので、自制心が未発達な子どもたちは際限なく食べてしまいます。甘いお菓子などでカロリーを取ってしまうと、主食であるご飯を食べなくなってしまうことにもなりかねません。それが偏食の発端となり、むし歯になる原因にもなっていくから恐ろしいのです。
 そして両親が偏食だとその子どもも偏食であるという統計学的な結果もあります。子どもは親の嫌いなものや食べないものは、決して口にはしません。
 またそうした親の作る食事は、概して栄養バランスの取れた内容ではないことが多いものです。まさに子は親を映す鏡たるゆえんです。
 そしてそのことは、子どもにとってたいへん不幸なことです。まず親自身の意識改革が必要ですね。好き嫌いをなくすためには「この野菜はこうやって食べるとおいしいよ」といった会話から始めるとよいでしょう。
 子どもは、最初は恐る恐るかもしれませんが、次第に興味を持って野菜が好きになっていくことでしょう。もちろん親が子どもの前でパクパク食べて、見本を示すことは言うまでもありません。
 そうなれば身体も健康になるし、むし歯にもならないでしょう。
 好き嫌いのない子どもは、成長してもしっかりとした食生活を続けますので、むし歯のない心身の丈夫な大人になっていくこと間違いなしです。
 若いお父さんお母さん方、ぜひ実行して下さいね。



コラム15 健康寿命を延ばして充実した老後を

 皆さんもご存じのように日本人の平均寿命は世界トップクラスで2010年度では男性79.55歳、女性にいたっては86.3歳です。
 しかし、日本人の健康寿命は2010年度では男性で70.42歳、女性は73.62歳で平均寿命との差は10年近くあります。
 ところで平均寿命はよく耳にしますが健康寿命とは何でしょうか?
 健康寿命とは2000年にWHO(世界保健機関)が提唱した概念で、「心身共に自立し、健康的に生活できる期間」と定義されています。平均寿命と健康寿命との差は、日常生活に制限のある「不健康な期間」を意味します。わかりやすく言うならば、平均寿命から介護年数を引いた数が健康寿命になります。
 2010年において、この差は男性9.13年、女性は12.68年でした。今後、医療の進歩に伴い平均寿命が延びるにつれてこの差が拡大すれば、健康上の問題だけでなく、医療費や介護費の増加が懸念されます。したがって寿命を延ばすだけでなく、いかに健康に生活できる期間を延ばすかに関心が高まっています。
 実は、健康寿命を延ばすのに「歯科」は大きな役割を担っているのです。
 例えば、しっかり噛むことでアルツハイマー病の予防に効果がある事がわかってきました。またしっかり噛むことで肉体のパフォーマンスを向上させることも分かってきています。そして歯があることで、はきはきと話すことができ周りの人たちとコミュニケーションがとれ、社会の一員として活動しやすくなります。
 歯周病と糖尿病との相関関係がわかってきたので、歯周病をしっかり治療して管理することで糖尿病治療にもよい影響を与えることができます。
 もちろん歯を失ったとしてもきちんと入れ歯を入れて適切に調整されていれば噛むことの健康への貢献は享受することができます。
 このように「何でもおいしく食べられる」ことが健康寿命を延ばすことにつながります。元気で長生きして、幸せな老後を過ごしましょう。
 



コラム16 健康はお口から

 ”病は気から”とは昔からよくいわれていることわざです。病気は、気の持ちようで、良くも悪くもなるという意味合いを表しています。近年、科学的にも証明されてきているようです。「早寝早起き、腹八分」も貝原益軒が著した養生訓に書かれてありますが、現代にも通じる健康法です。
 ”病は口より入る”も昔からいわれていることです。栄養摂取や水分補給などはお口からですし、感染症の予防も、お口の中をきれいにすることから始まります。つまり、お口の中を清潔にするということは、身体を守り病気の予防につながるということです。
 ”一口30回噛み”も有名です。よく噛むことで、唾液がたっぷり分泌され、消化を助け、胃腸の負担を軽くするからです。最近は、食べ物を噛むときに使われる咀嚼筋、咬筋などの筋肉を動かすことで、脳の活性化を促し、記憶力アップやストレス軽減に役立つことが明らかにされています。
 もう一つ、簡単にできて、おすすめなのが、『お口の体操』です。お口だけでと不思議がられる方もいらっしゃることでしょう。
 福岡市開業の医師、今井一彰先生が鼻呼吸という観点から「あいうべ体操」を推奨しておられますので、ここで紹介します。
 「あ~」は、口を大きく開いて、「い~」は、横に伸ばして、「う~」は、口をすぼめて、「べ~」は、舌を出してそして声に出して行います。だいたい5秒間で1回、一分間で10回行います。身体がポカポカしてくるくらい、意外と結構な運動になるのがわかります。口周辺と舌の筋肉を意識的にトレーニングすることで、しっかり口を閉じて鼻で呼吸できるようになるそうです。鼻呼吸はゴミ、塵(ちり)、アレルゲンなどを除去するほか、空気をほどよく加温、加湿してから喉、肺に送る役割を果たすのです。
 鼻呼吸には、汚れを体内に入れないようにして、自然治癒力(免疫力)を高める効果があるということです。さあ、みなさんもだまされたと思って一度トライしてみてください。
 



コラム17 歯科の未来とコンピュータ(CAD/CAM)

 現在、金属のかぶせを作るには様々な材料といくつもの製作過程を必要としています。例えば歯型を取るための印象材と呼ばれる粘土のようなものや模型を作るための石膏、ワックス、金属など…。歯の失われた部分を修復物で置き換えるには、もとの歯の形態と反対側の歯の噛む面の形態と顎の動きの記録が必要です。そのために歯の型を採ります。歯型から修復物を作るために石膏で模型を作り、ろう型を作り、ろう型を金属に置き換えます。この様に歯型模型をもとにしてかぶせを一つ一つ歯科技工士が手作りします。一人一人に合わせて作るため手間と費用がかかりますが、精密な修復物を作ることができます。
 現在は、こうした工程がコンピュータを用いて機械で行うことも可能になり、材料も工程も削減できるようになりました。
 製作工程は様変わりし、カメラで歯の形を立体的に記録し、画像に基づきコンピュータ上で修復物をデザインするのです。そのデータを元にロボットが材料を削り出す方法や盛り上げて仕上げるやり方などがあります。
 近年、歯科の学会えは修復物を、コンピュータを用いて作る方法が大きなトピックになっており、歯科メーカーからはたくさんの機種が売られています。
 この背景には今日、世界中で歯科技工士の数が不足しており、近い将来手作りでは歯の修復物が作れなくなることが危惧されているからです。
 それでは全てをコンピュータに任せられるのでしょうか?
 コンピュータによる大量生産が実現されたものづくりの現場でも、スペースシャトルの先端は熟練の技師による繊細な手の感覚でしか作れないそうです。歯科では前歯のセラミック修復の際、天然の歯に合わせて色を再現していくことはコンピュータにはできず、セラミストと呼ばれる熟練の技工士の役割が欠かせません。
 近い将来、歯科の世界もコンピュータができることはコンピュータに任せて人間にしかできないことを担っていく時代になるでしょう。
 



コラム18 入院前の口腔ケアで感染症予防を

 「周術期」という言葉を耳にしたことはありませんか?医学用語で手術前・手術中・手術後の期間のことを指します。いま、この周術期の口腔ケアが早期回復・早期退院につながるとして注目を集めています。
 口の中には数千億個の細菌が生息していると言われています。歯の間や歯と歯ぐきのすき間などに付いている歯垢(しこう)は細菌のかたまりで、うがいや簡単なブラッシングだけでは取り除くことができません。口の中を清潔にしないまま入院し、手術すればどのようなリスクがあるのでしょうか。
 術前・術後で抵抗力が弱った状態では、口の中の細菌が肺に入って炎症を起こす誤嚥性肺炎の危険が高まります。歯周病による合併症のリスクも見過ごせません。歯周病菌が血液内に入ると、糖尿病を悪化させたり、心内膜炎を引き起こすリスクが高まります。他にも、細菌が血液を通じてあらゆる臓器に入り込み、感染症を招くこともあります。抗がん剤治療では、副作用で口の中の乾燥症や結膜炎を発症するケースが少なくありません。
 そこで、周術期の口腔ケアです。入院前や入院中に歯科医師や歯科衛生士による専門的なクリーニングで口の中を清潔にすれば、感染症のリスクを抑えることができます。また、ブラッシングや入れ歯の清掃方法などのセルフケアも身に付ければ、入院中や退院後も快適に過ごすことができます。
 静岡県立静岡がんセンターの調査では、鼻や口、のどなどの頭頸部(とうけいぶ)がん患者に口腔ケアを実施したところ、口腔内の合併症を発症した人は64%から16%に減少。口から食事を摂取できるようになった日数は、平均で術後40.2日から10.6日に短縮したことが報告されています。
 食べ物を取り入れる口は、「命の入り口」と言いますが、「病気の入り口」にもさせないことが大切です。口腔ケアで感染症のリスクを減らし、身体の回復を早めることができれば、早期退院につながります。
 入院前には、歯科医院で専門的な口腔ケアをお勧めします。
 


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