コラム
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当院が発行している医院新聞に掲載しているコラムを一部紹介いたします。2か月に一度発行しておりますので、来院された際には是非ご覧ください。
- コラム1 人類の食の文化、お菓子の歴史
- コラム2 味とテクスチャー
- コラム3 貝原益軒『養生訓』に学ぶ ヘルス・プロモーション(健康づくり)
- コラム4 八重歯と日本女性のチャームポイント
- コラム5 癌とむし歯は似ている?
- コラム6 震災関連死と誤嚥性肺炎を防ぐ‐歯科からのアプローチ‐
コラム1 人類の食の文化、お菓子の歴史
むし歯の大敵として、いつもやり玉に挙がるお菓子ですが、果実を主食とする猿から進化したとされる人類は、そもそも甘党だったといわれています。 洋菓子の起源は古く、先史時代には果実や落花生などを干したり、アルコールやハチミツに漬けたりして加工したものを食べていたそうです。
そして小麦を使ったお菓子(ケーキの原形)が最初に作られたのは、パンの発祥の地であるメソポタミアとされています。古代メソポタミアの人々は、ビールやワインと共に、ケーキをほおばっていたのでしょう。
また、パンの先進国である古代エジプトでは、バターやクリームが新たに採り入れられ、ハチミツとミルクを混ぜて焼きあげるハニーケーキが貴族の間で人気を博しました。
製粉や製菓の技術は古代ギリシャ、ローマでさらに発展しました。特に、十字軍の遠征は、ヨーロッパに砂糖という甘味料を初めて伝えました。
当方からもたらされた砂糖やリキュールをふんだんに用いたお菓子は、最高級のぜいたく品とされ、珍重されました。
大航海時代が訪れると、新大陸を含む世界中からさまざまな食材がヨーロッパに流れ込み、新たにたくさんの種類のお菓子が生み出されました。
その後各国には独自の伝統的な菓子文化が芽生えましたが、洋菓子は国境や文化の違いを超えて世界中に愛されています。
日本へは1543年以降、ポルトガル人やスペイン人によって鉄砲などと共にカステラ、ボーロ、コンペイトウ、カルメラなどの南蛮渡来のお菓子が伝わりました。
ちなみに、14代将軍の徳川家茂は、自ら調理するほどのカステラ好きだったことが知られています。
17世紀前半以降、江戸幕府の鎖国政策によって輸入が制限されると、試行錯誤の結果わが国独特の和菓子が生み出されることになるわけです。たかが菓子と侮るべからず、お菓子は人類の文化そのものです。
食する時には、歴史の重みを感じ、適量をありがたくいただきましょう。食べた後の歯のブラッシングも忘れないように気を付けて下さいね。
コラム2 味とテクスチャー
カナダの脳外科医ペンフィールドの「ホムンクルス」(小人)という図があります。脳の中にある体をつかさどる部分の比率を人体で描いたものです。唇や歯、舌の占める割合が非常に大きいことが一目でわかります。
さて、唇と頬は、爬虫類にはなかったものが哺乳類で現れてくるひと繋がりの構造です。魚や蛇、蛙の顔には表情がありません。それは、哺乳類以外の動物では顔に唇や頬のような肉質の部分がほとんどないからです。唇と頬ができて初めて、口の中で食物を噛むことができます。つまり『咀嚼』です。
食物は私たちにとって不可欠である一方、体にとっては異物であり危ないものもあります。食べる時には、感覚をフル活用して危険性を少しでも減らします。視て、嗅いで、口に入れ、口は体に入れるかどうかの最後の判断をします。その基準は、味とテクスチャー(歯ごたえ、歯ざわり、舌触りなどの刺激)といわれる感覚です。
味は水中の分子に反応しますので、味を感じるには咀嚼して唾液と混ぜ合わせることが必要です。これにより美味しい、不味い、危ないなどを判断します。大まかに言うと、甘味はエネルギー、塩味はミネラル、甘みはタンパク質、酸味は腐っているのかな?苦味は毒物かな?というシグナルです。噛むことは飲み込みやすくするだけでなく、味覚がフルに働くための役割も果たしています。
もう1つテクスチャーを。口の中で、ジャリジャリしたものや尖ったものをを危ないと感じたり、ご飯の硬さや粘り、リンゴのシャリシャリ感、こんにゃくの弾力を歯ごたえとして楽しんだりします。前歯のすぐ後ろの上あごにヒダヒダがあります。ここに食べ物を舌でわずかに圧縮して微妙な硬さの違いを見分け、絹ごし豆腐なら奥歯で少し噛んで、リンゴならカットして奥歯でしっかり噛んで、という風に。
食べ物のおいしさを感じる時、歯は欠かせない働きをしています。
コラム3 貝原益軒『養生訓』に学ぶ ヘルス・プロモーション(健康づくり)
貝原益軒(かいばらえきけん)は江戸時代に生きた儒学者です。そして、自ら考案した健康法『養生訓』を実践し、85歳の長寿を全うしたとされています。
現在の日本は世界一の長寿国とまで言われるようになりましたが、糖尿病・高血圧などの生活習慣病が逆に増え、これらの疾病により、寝たきり老人が増えるという素直にも喜べない結果にもなっています。そこで、老後も健康な生活を楽しむために、積極的に自らのヘルス・プロモーションを考える時代なのです。
さて、貝原益軒が養生訓を著したのは84歳の時とされていますが、「1本の歯もなくしていない」と記述されています。
80歳で20本自分の歯を残すという『8020(ハチマルニイマル)』をこの時代に余裕で達成していたことになります。
果たしてこの養生訓には、何が書かれてあったのでしょうか。歯についての記述はふたつほど。ひとつは、「1日に歯を35回、カチカチ鳴らすと歯の病気にならない」、もうひとつは「楊枝で歯の根を深く刺してはいけない、歯の根が浮いて動きやすくなる」ということです。解説を試みるとこうなります。カチカチ音がするほど噛むことは、歯や歯ぐきを鍛えることになり、むし歯や歯周病の予防に繋がります。そして、現在の歯ブラシに相当する楊枝で歯ぐきを傷つけることは、感染を引き起こし歯周病を悪化させるということでしょう。
つまり、何も特別な事を書いているわけではないのです。これに比べると現在歯科医院で実践している予防ケアの方が、より一層充実していますね。
しかし、現代人においてもっとも大切なこと、困った時の医者頼みにせず常に自分の身体の手入れに気を配るという養生の基本を説いているのです。
私たちもこの偉大なる先人、貝原益軒先生の「自分の健康は自分で守る」という根本的な教えに従い、日頃より歯だけでなく全身の健康管理に留意し生活していきたいものですね。
コラム4 八重歯と日本女性のチャームポイント
最近の女性のチャームポイントをご存じですか?少し前は「二重まぶた」や「ほくろ」「えくぼ」などが有名でしたが、今は「八重歯」が一番のチャームポイントだそうです。驚くことに八重歯に憧れる方の中には、八重歯を人工的に作って装着する「付け八重歯」をオシャレ感覚でされる方もいらっしゃるようです。
チャームポイントの移り変わりの背景には、若い女性の憧れるアイドルが影響していることがあります。最近では、今をときめくAKB48の板野友美さんやタレントの沢尻エリカさんが挙げられます。このブームは20年ほど前にもあり、1970年から80年代にかけても「八重歯」が流行したようです。女優の石野真子さんや松田聖子さんが有名ですね。
では、なぜ八重歯が魅力的なのでしょうか。八重歯の女性は年齢よりも幼く見えるのが魅力のひとつです。実は日本人の八重歯好きは、江戸時代くらいまでさかのぼるのではないか、という説があります。これは、高貴な身分の人は小さいころからやわらかいものばかり食べていてアゴが細くなり八重歯になったため、それに対する憧れが生じたのではないかという説です。
また、作家の谷崎潤一郎氏は随筆のなかで「元来日本では八重歯や味噌っ歯の不揃いなところに自然の愛嬌を認め」「東京、京都、大阪等の大都会の美人と云うものは大体において歯の性が悪く、不揃いである」と書いています。80年前の日本人は八重歯に愛嬌を感じており、都会の美人はみな八重歯だったことがわかります。欧米人の求める美の基準はハリウッドスターの口元に代表されるように完璧性を重視する傾向がありますが、日本人は元来、八重歯のようにちょっと崩れていたり欠けていたりするところに美を感じるようです。
ちなみに、先ほど挙げた石野真子さんは、年齢にふさわしい口元にしたいという理由で25歳の時に矯正されて、今は八重歯ではないそうです。若い時の八重歯の魅力は、年とともに減っていくものなのかもしれませんね。
コラム5 癌とむし歯は似ている?
私たち人間の体の中では、常にガン細胞は作られています(1日に約5,000個)。ただ、正常細胞の方が強いため、ガン細胞はやっつけられ、病気になりません(白血球の仲間のNK[ナチュラルキラー]細胞がやっつkてくれる)。しかし、免疫力などが落ちると、ガン細胞の自律性増殖が抑えられなくなり、発病するのだそうです。
歯のむし歯にも同じようなことがいえます。歯の表面は常に酸にさらされ、歯の表層下にミネラルの分布が低くなる現象が起こります。この現象は主に食事の直後から始まります。これを脱灰(だっかい)といいます。ただこの段階では、表層のミネラルは比較的多く残っていますので、穴はあいていない状態ですし、また細菌の侵入もありません。そして食後、時間の経過と共に、脱灰された歯の表面と唾液が接する機会が確保され、修復して行きます。それが再石灰化と呼ばれる現象です。
このように歯の表面では常に脱灰と再石灰化という二つの現象が起きているのです。そしてそのバランスが崩れ、脱灰が再石灰化を上回るとむし歯になるのですね。つまり、ガン細胞が脱灰で、NK細胞が再石灰化というわけです。
ですから、食後や寝る前の歯の表面の汚れを取り除く歯磨きは大事ですし、プラス再石灰化を促すフッ化物の応用はぜひとも必要です。
しかしだらだら食べ続けていたり、食後や寝る前の歯磨きを怠るとそのバランスが崩れてむし歯になるのです。
だらだら食べるな、砂糖は控えろ、歯磨きしようねというと、どうしても辛抱とか我慢という暗いイメージがありますが、小さい子どもを教育するには大事なことです。しかも正しい食生活の管理と身だしなみの教育は、むし歯予防にとどまらず、子どもたちの健全な心の発育にも好影響を与えますので、若いおとうさん、おかあさん方頑張ってください。そして、お孫さんを可愛がっていらっしゃるおじいちゃん、おばあちゃんにもお願いします。
コラム6 震災関連死と誤嚥性肺炎を防ぐ‐歯科からのアプローチ‐
平成23年3月11日に東日本大震災があり甚大な被害がもたらされました。
多くの犠牲者が出た今回の大震災ですが、家屋倒壊による圧死や津波にのまれるといった地震に直接起因する死だけでなく、避難所の寒さや衛生状態の悪さから持病が悪化するなどして亡くなる震災関連死も増えているようです。
1995年の阪神大震災では、6400名を超える死者数の1割以上が震災関連死とされています。避難所などで亡くなる震災関連死の原因で誤嚥(ごえん)性肺炎が注目されたのは阪神大震災のときでした。直接死が5512人で、震災関連死922人のうち24%(223人)が肺炎、そのほとんどが誤嚥性肺炎でした。
誤嚥性肺炎は、加齢や脳血管障害の後遺症で飲み込みやせきをする力が弱くなり、口の中の細菌や食べ物が誤って気管から肺に入って起こります。避難所では水や歯ブラシが不足して口腔ケアが不十分になり誤嚥性肺炎は起こりやすくなります。
予防方法として歯磨きが最大の予防になります。歯磨きができない場合はうがいをして下さい。使える水が少ない場合はなるべく小分けにして回数を多くしましょう。水が無い場合はガーゼなどを人差し指に巻き付け歯の表面の汚れを落として下さい。
また、入れ歯は汚れやすい素材です。入れ歯を清潔にすることを心がけて下さい。食べた後は歯ブラシ、もしくはガーゼなどで拭いて下さい。そして夜は外して寝て下さい。
唾液も誤嚥性肺炎を防いでくれます。細菌を洗い流してくれるだけでなく、殺菌効果もあります。唾液を出す方法としては、あごのエラあたりの少し下側に親指をあて、他の指を耳の前あたりの頬にあてます。ここには唾液のたまっている袋があるので円を描くようにもんでいくと2~3分もすれば次第に唾液が出てきます。
阪神大震災の教訓が生き、新潟県中越沖地震では肺炎による震災関連死は1人だけでした。東日本大震災の一刻も早い復興を願っています。
